ガラスの花
- 2012/05/29(火) 13:42
こんな
昔話
が
あった。
ガラスの花。
それは
細く
はかなく
華奢で
かわいらしく
何よりも
愛らしかった。
ガラスの花
は
花が
咲いてから
少しの
間だけ
ガラスの
ように
透き通り
そよ風
でも
折れてしまいそうな
細い
腰を
揺らしながら
道端で
そっと
ささやかな
光を
放ってる
花だった。
花びらに
震える
玉のような
朝露が
日の光
を
はじく
様は
まさに
楽園
に
咲く
花の
ようであった。
ガラスの花
は
その
うつくしさと
しばらく
すると
その
輝きが
うしなわれ
少しずつ
普通の
花に
戻ってしまう
ことから、
清らかさ
の
象徴と
され、
自生
している
ガラスの花
を
摘んでしまう
ことは
世の中の
タブー
と
されていた。
無断で
ガラスの花
を
摘んだものを
厳重に
罰する
法まで
あったそうだ。
そんなとき
あるところに
草花
を
こよなく
愛する
青年が
いた。
彼は
自分の
庭に
ありとあらゆる
植物
を
植え、
日が昇ってから
日が沈むまで
彼らの
世話を
していた。
彼は
毎日
彼らの
世話を
しながら
人々を
自分の
庭に
招き、
お茶を
用意し、
ひと時の
安らぎを
与えた。
望むもの
が
あれば
必ず
きちんと
面倒を
みる
という
約束で
彼は
庭の
どんな
植物でも
分け与えた。
祝いの
ときには
見ているだけで
楽しく
なってしまう
はなやかな
花束を。
友人が
亡くなった時には
生前
に
愛した
花々を
そっと
沿えるように
して
友人へ
送った。
あるとき
青年が
山道を
あるいていると、
ふと
木漏れ日の
影で
控えめに
その
華奢な
腰を
ゆらしている
ガラスの花を
見つけた。
彼は
もちろん
ガラスの花
も
他の草花と
同じように
好きだったし、
ガラスの花
を
摘んでは
いけない
ということ
も、
もちろん知っていた。
実際
彼は
今まで
ガラスの花
を
摘んで
自分の
庭に
植えよう
などとは
考えた
ことも
なかったのだ。
しかし
その時
彼が
出会った
ガラスの花は
まさに
今朝
その
いじらしい
花びら
を
初めて
開いた
らしく、
今まで
彼が
愛して
きた
どの
草花
よりも
可憐で
美しかった。
彼は
どうしても
その
ガラスの花
を
自分の
庭に
植えたく
なってしまった。
彼は
彼女も
それを
望んで
いるに
違いないと
確信
していた。
あなたの
そばに
ずっと
いさせて
ください。
私は
そのために
今朝
花開いたのです。
と、
彼女の
声が
聞えたのだ。
しかし、
それが
友人たち
に
知れてしまっては
彼は
今までの
信頼
を
すべて
失って
しまうかも
しれない。
それどころか
つかまって
しまっては
自分の
庭に
植える
どころではない。
もしかしたら
彼と
ともに
長年
草花
を
愛してきた
友人
たちは
理解を
示してくれる
かもしれない。
しかし
彼は
これから
一生
「ガラスの花を自分の庭に植えた男」
と
言われ
続ける
運命を
背負わなければ
ならない。
彼には
どうして
いいか
わからなかった。
誰かが
決めた
正しさに
したがわなければ
いけないのか。
いや、
違う。
違う。
そうではない。
彼は
自分の
魂
の
声を
聞くべきなのだ。
彼女の
声を
聞くべきなのだ。
たとえ
すべてを
失ったとしても。
人から
後ろ指
を
さされたと
しても。
そう
彼は
何度も
何度も
自分に
言い聞かせながら
朝露よりも
大粒な
涙を
その
ガラスの花
に
落とした。
【ガラスの花】
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